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汚染水からトリチウム水を取り除く技術を開発

東日本大震災の復興支援プロジェクトから生まれた汚染水対策

近畿大学工学部(広島県東広島市)教授 井原辰彦、近畿大学原子力研究所、東洋アルミニウム株式会社(大阪府大阪市)および近大発のベンチャー企業である株式会社ア・アトムテクノル近大らの研究チームは、放射性物質を含んだ汚染水から放射性物質の一つであるトリチウムを含む水「トリチウム水」を分離・回収する方法及び装置を開発しました。

【研究の概要】
 トリチウム水は、水と化学的性質がよく似ていることから、従来の除染技術では、汚染水から水とトリチウム水を分離することは困難とされていました。井原ら研究チームは、炭やスポンジのように多量の小さな穴を持つ構造「多孔質体」と、ストローのような細い管を液体につけた際に、液体が管の中を上がっていく現象「毛管凝縮」に着目し、この現象を除染技術に応用するため研究を進めてきました。
 完成した多孔質体は、直径5nm(ナノメートル)以下の大きさの微細な穴「細孔」を有し、毛管凝縮によって細孔内に水とトリチウム水を取り込んだ後、トリチウム水を細孔内に保持したまま、水だけを放出する機能があります。この多孔質体を格納した装置(フィルター)によって、汚染水からトリチウム水を高効率に分離することができます。
 また、多孔質体を加熱することで、細孔内に残ったトリチウム水を放出し回収することができます。装置は繰り返し利用できるため、低コストでのトリチウム除染が可能です。
 本研究成果により、汚染水の容量を削減することが可能になり、汚染水の保管場所問題の改善が期待されます。
 なお、本研究成果は特許協力条約に基づく国際出願を行っています。

【研究の詳細】
 ベーマイト処理※1済みのアルミニウム粉末焼結多孔質フィルターを格納した本発明装置を用いて、実証実験を行いました。40℃の温度下、0.2MBq/L濃度の擬似汚染水を毎時3.5g供給し、1時間毎にトリチウム含有水溶液を測定しながら、連続して10時間実験を行った場合の回収積算量(g)と除染率(%)の関係を調べました。グラフは、ベーマイト処理時間を0分、10分、300分とした3種類のアルミニウム粉末焼結多孔質フィルターを比較した結果です。いずれも処理量が増加するにつれて除染率は低下していますが、ベーマイト処理を行ったフィルターでは初期段階で、ほぼ100%除染されていることを確認しました。
※1:ベーマイト処理 アルミニウムに熱水処理を施すことで、アルミニウム系酸化皮膜(AlOOH、Al2O3・H2O)を形成する。

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